先日、NHKのお昼のニュースを見た後、そのままTVをつけっ放しにしていたら、ローカルの風物詩というか、田舎の町の風景とインタビューをやっていた。

ボケッと見ていたら、はっとした。のどかなインタビューの間から聞こえる背景音が異常にリアルなのだ。勿論TVの音だ。アナウンサーや町民の声は聞きなれた普通の音。しかしバックで流れる背景音(水のせせらぎや風の音、鳥の鳴き声等)は、目をつむると、まるでそこにいるかのような臨場感がある。突然カラスの鳴き声、TVから3mはなれて見てる私の頭上右上に定位する。びっくり!!

これがオーディオかと実感した。皮肉にも安物のTVの音で。おそらく背景音を録っているマイクはビデオカメラ内蔵のものだろう。この番組はよくある海外ロケの絶景を収めたドキュメンタリーなどとは違って、お気楽な身の回りの風景を毎日放送しているものだ。予算も限られているはずだ。

自室のTVの両脇には、20年来音楽を楽しませてもらっている英国製のスピーカーが置いてある。30cmウーファのリニアフェイズ3WAYだ。昔、TVの音をこのSPを通して聞いていたことがあった。しかしすぐ止めた。理由は違和感があったから。TVの音は内蔵のSPで聞くのがBESTと悟った。

例えば海外ロケの絶景を収めたドキュメンタリーをこのSPで聞くとしよう。中高域は粒立ち過ぎ、中低域は分厚く、台詞はスポットライトをあびたように前に浮き出る。厚化粧で演出過剰な重苦しい芝居を見てるような感じだ。

しかし一旦音楽ソフトをかけてみると評価は逆転する。音楽は人工的なもの。個の意識(感性)と計算から生み出されたアーティスティックなものだ。さり気なさにも、意識が息づいている。環境音を聞いて安らぐ事はあっても感動することはあまりないだろう。音楽は知的好奇心をくすぐり、ユーモアがあって、時に希望や感動を与えてくれる。真実でなくとも騙されて幸せになれる世界だ。

音楽により深い感動を求めれば求めるほど、オーディオの本質からは離れていくのかもしれない。私は音楽が好きで、好みの音楽が自分の理想のイメージでなるように調整しがちなので、オーディオ的客観性は全くないだろう。しかし一方で、バーチャルリアリティの世界も好きなので、ポータブルDATと小型マイクで自然音や街の音を録音するのも機会があればやってみたい。

えっ〜DATって、もう古いんですか?

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