The Stokowski Soundを聞く。ストコフスキーと言えばクラシックの名指揮者、アレンジャーとして有名だが、高尚なクラシックファンには評価が今一なのは残念だ。このアルバムはストコフスキーの編曲したバッハ、ベートーベンを始めとするクラシックの名曲が9曲収められている。テラークレーベル86年の録音だ。
指揮はストコフスキーではなく、エリックカンゼル、シンシナティポップスオーケストラの演奏。

こんなふうに紹介されると、安物のイージーリスニングかと思われるが、決してそんなことはない。名曲、名演奏、名録音と3拍子揃った名盤だ。何といっても録音が凄い。

大編成のオケをたった3本のマイクで空気感を余すところなく拾い上げる。そのダイナミックレンジの広さは怖いくらい。日頃昨今のコンプ、リミッターかけまくりの圧縮音楽になれた耳には信じられない音だろう。弱音部にVOLを合わせて聞き入っていると、あっという間にクレッシェンドしていきSPが張り裂けんばかりに金管が炸裂するといった感じ。思わずVOLを下げてしまう。さらにマイクの本数が少ないため位相ずれがなく、左右奥行き高さの距離感が正確に出る。実際、10畳の部屋が目をつむればコンサートホールとなる。こういうバーチャルリアリティサウンドがハイファイオーディオの醍醐味と言えるのではないか。

80年代中期のテラークはいい録音が多い。今までのお気に入りはチャイコフスキー5番、プレヴィン指揮のものだ。これはやや音楽的な聞き易さが加味されるが、他のメジャー録音のCDに比べダントツに広い音場が感じられる。同じ頃のデンオンレーベルはM&Kマイク使った構成だが、柔らかくしなやかな美しい音でややデフォルメされてるかな?と思える。

しかしこのアルバムをちゃんと聞くには、専用のオーディオルームとリニアリティの優れたオーディオセットが必要かもしれない。

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