自分が音楽に一番夢中になった時期はといえば14歳から20歳になる頃だろうか。特に高校生の頃、BeatlesやCarpentersのアルバムを聞くようになって単純な構成のそれまでの日本の大衆音楽とは次元を異にする凝った和声進行、自在な転調、現在のサンプリング貼り付けの元となるような自由な曲作りなど、ただただ圧倒され凄いと思いつつ、いつかはそんな作品を作ってみたいと憧れていただけのあの頃。

それでも真似事みたいなことができるようになったのは、90年以降MIDI機器とデジタル機器の発展のおかげでアイディアを容易に具現できるようになってからだ。ところで不思議なもので昔好きだった曲は今でも自分の心の中で輝きを失うことはない。

そんな音楽的な憧れとは別に、胸がキュンと締め付けられるような懐かしい曲は人それぞれ必ずあるだろう。やはり高校生の頃、ラジオから流れるセルジオメンデス&ブラジル77の「Gone Forever」という曲がいつも心から離れなかった。その後も聞くたびに懐かしさでいっぱいになって多感なあの頃を一瞬でも蘇らせた。ドーナツ盤で持っていてあまりに聞きすぎたためチリチリノイズも凄いのだが、今聞いても同じ感覚が蘇る。CDで欲しかったがずっと再発されなかった。それが最近アマゾンで入手できたのだ。

〜66から〜77に変わって最初のアルバムに入っていたことになる。ポールウイリアムスの作曲によるものだが、彼の自作自演のアルバムではあまり感激しなかった。やはりアレンジ(カーペンターズを彷彿とさせるバロック風の味付け)や女性VOが良かったのかもしれない。セルジオメンデスのアルバムはBEST盤くらいしか持っていなかったが、そのソフィステケートされたサウンドと選曲の好みが合うので結構好きだった。決して最先端のリズムを取り入れたり重厚に料理したりせず、あくまで聞いて心地よい音楽を提供してくれるのがいい。そのあたりがアメリカのミュージシャンとの違いかもしれない。

同時に購入した「VINTAGE74」は「Pais~」よりもはるかに音楽的に素晴らしいアルバムだと思う。こちらはスティービーワンダーの曲が数曲カバーされてるが凄く出来が良い。74年としてはモダンなサウンドだろう。とは言え、「Pais~」はあの曲が入ってるだけで、自分としては宝物なのである。

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